全日本医学生自治会連合(以下、医学連)は、2025年3月14日から16日にかけて、国立オリンピック記念青少年総合センターで第42回定期全国大会を開催しました。その様子を報告します。
対面とオンラインのハイブリッド形式で開催しました。今年は全国から13大学35名の学生が参加し、このうち代議員14名、役員12名でした。加えて、代議員11名、役員2名から委任状が提出されました。大会正式構成員の定数69名(代議員2名/校×加盟校27校+中央執行委員15名)のうち、過半数となる計39名の資格が認められ、本大会は成立しました。オブザーバーの参加も9名ありました。
この大会は、医学連の活動を総括し、来期の方針を決定する場です。中央執行委員により決議案が提起され、全国の加盟自治会から派遣された代議員の承認を得ることで決議が可決され、その方針に沿って医学連は活動していきます。また全国から学生が集まり、自治をテーマに交流する機会にもなっています。主な内容は表の通りです。
第42回定期医学連大会の概要 |
1日目 | 2日目 | 3日目 |
議長団・各委員選出 中央執行委員会報告① SGD①(報告①について) 中央執行委員会報告② 医師増員署名について SGD②(報告②・署名について) 中央執行委員会報告③ SGD③(報告③について) 交流会 | 中央執行委員会報告④ 自治会取り組み紹介① SGD④(報告④・紹介①について) 講演会① SGD⑤(講演会①について) 自治会取り組み紹介② SGD⑥(紹介②について) 交流会 | メッセージ紹介 全体討論 講演会② SGD⑦(講演会②について) 全体討論 予算決算案採決 決議案採決 役員選挙 |
※SGD…Small Group Discussionの略。
【中央執行委員会報告】
中央執行委員会は、医学連に加盟する各自治会から選出された役員から成る、最大定数15人の組織です。中央執行委員会の役員は、医学連を代表し、全国大会の決定にしたがって運動を統括・執行する役割を担います。また、全日本医学生自治会連合規約(以下、規約)は事務機関として「書記局」をおくことを定めており、書記局員は中央執行委員会の役員とともに運動を行っています。「中央執行委員会報告」は、医学連役員ならびに書記局員が、41期中央執行委員会の活動内容を全国の自治会から選出された代議員に報告するものです。
報告は、本大会で採択された決議「学生自治の取り組みを広げ、より良い学生生活、医師養成を実現しよう」に沿って行われました。詳細な内容は、そちらをご覧ください。
〜各中央執行委員会報告の概要〜
①自治、医学連
②医学教育・施設の充実化、全国医学生ゼミナール、医学教育学会
③医師の働き方、地域枠、学費
④新歓、自治会交流集会、自治会再建、医学連加盟、自治会活動、医学連40周年記念集会
SGDでは、医学生のメンタルヘルスについて「入学後の試験勉強には受験勉強と異なる向き不向きがあるが、それで一律に進級が判定されることが負荷である。」医師数について「診療科によってワークライフバランスが決まりがちで、進路が絞られてしまう。社会からのフォローが欲しい。」といった意見が聞かれました。また、各自治会の新歓の様子が共有され、個人の不満を集めて学生全体の課題として共有し、自治会が存在するメリットを伝えることが大切であることを確認しました。
~参加者の感想~
「当たり前にできていた医学連のタスクも、そこまで持っていくために信頼関係を築く必要があったと再認識した。」「自治会といった学生主体の意見集約組織の重要性を再確認した。」
【自治会取り組み紹介】
自治会取り組み紹介では、弘前大学・岐阜大学・徳島大学・山梨大学・島根大学・国際医療福祉大学から発表がありました。各大学の取り組みは様々で、学生の要求実現や学生生活の質の向上のために活動し成果を上げていることが報告されました。
その後行われたSGDでも、各大学の様子や自治会の取り組みを紹介しあったり、それぞれの課題に対する解決策を共に考えたりと、盛り上がっている様子がみられました。特に、駐車場に関する話題があがった班が多かったようです。
~参加者の感想~
「どの大学も自治会をよりよく変えようと行動に移していて素晴らしいなと思った。」「自治会の新歓等での悩みを各大学で話し合うことができて有意義だった。」
【講演】
「ノーベル平和賞を受賞して 戦争も核兵器もない世界を」
濱住治郎先生(日本原水爆被害者団体協議会 事務局次長)
日本被団協のノーベル平和賞受賞の意味や影響、濱住先生ご自身の胎内被曝者としての体験、核廃絶と国家補償に向けた動きをご解説いただきました。
SGDでは、被爆体験を継承していく大切さを再確認したり、「核の傘」の主張がある中でそうすれば核廃絶を実現できるか議論したりと、活発に話し合いが行われました。
~参加者の感想~
「私たちが戦争を体験された方の思いを引き継いで伝えていけるようにならなければならないと思った。」「核問題をはじめとした倫理的問題について深堀し話し合うことができた。」
「大学授業料と学生の経済的支援制度 現状と問題点」
小林雅之先生(桜美林大学 教育探求科学群 特任教授)
日本では教育費を親が負担する考え方が強く、教育の機会均等のためには教育が社会全体に与える効果を訴えていく必要があるというお話でした。また、修学支援制度に関する情報ギャップなどの問題点もご紹介いただきました。
SGDでは、給付型奨学金が少ない、大学の設備や事務の方の様子から大学の経営が厳しいことが学生にも伝わる、といった切実な声も聞かれました。
〜参加者の感想〜
「スライドに文字が多く、制度名も多く登場したため、少しわかりづらかったが、学費問題についての教科書のような、総ざらいができる良い機会だった。」「国ごとの教育費に関する認識の違いを学ぶことができて興味深かった。」「学費の値上げに関して物価上昇など仕方がない理由はあると思う。意見を言うことは大切だが、私たち自身日頃から多大な支援を受けているという気持ちで勉学に取り組まないといけないと強く感じた。」「もう少し話を深めたかったが時間がなかった。 考え方の違いを生に聞くことができ、良い機会だった。」
【全体討論】
全体討論は、参加者がそれぞれの立場を超えて発言をできる機会です。詳細は議事録をご覧ください。
冒頭、第40期中央執行委員長より、以下の発言が述べられました。「みんなが楽しく学生生活過ごしている間は医学連の意義は感じられないと思うが、学生がピンチになった時には、頼られる存在があることはすごい意義があることだと思っています。」
また、第41期中央執行委員長から、以下の発言がありました。「この1年でいろんな人に話しかけて、LINEを交換して、連絡を取った1年だった。その中で困っている声を聞くことができたり、自治会同士の繋がりがより深まったりした面もあって、大事だったんだなっていうのを改めて感じました。」
来年の医ゼミの主管校になった島根大学の学生からは、「現地になってみて、他県から来てくださる方への感謝とか、とくに全国実委の方々が凄い準備してくださることに感謝の思いを感じています。医ゼミと自治会は両輪的なところがあり、今年の医ゼミをきっかけに、自治活動を担ってくれる学生が増えたらいいなと考えています。」
他にも各参加者から、以下の発言が述べられました。「前回参加した時からかなり顔ぶれが変わったので、新しい人に会えて楽しかったです。」「被団協の濱住先生が、何があってノーベル賞のような大きな動きになるか分からないから、活動をとにかく続けることが大事なんだという風におっしゃっていた。皆さんもがんばりたいことは続けてもらえたら。」「今の6年生の先輩は見守りの姿勢が本当に素晴らしい。この先輩方と学べるのは41期しかないと思って医学連に飛び込んだ。先輩方が守ってくださった医学連とか、自治会というものを、これから自分たちが守って大切にしていきたい。」「医学連の活動の意義とか、本当に全国の医学生のためになってるのかということを疑問に思う中で活動させていただきました。その目標を達成するために、私たちは日々学び、多くの人から意見を集め、それを発信することが必要だと思っています。」「医学連のいいところをシェアしたいんですけど、一番は人がすごく好き。愛せる人が多いなとすごく思います。」
【議決採択・第42期医学連中央執行委員の選挙】
大会3日目には、決議案・決算予算案などの諸決議が採択され、第42期の中央執行委員会が選出されました。最後に、新中央執行委員長から閉会の挨拶を述べた後、第40期書記長よりメッセージが送られ、本大会は終了しました。
3日間にわたって行われた本大会では、活動報告や討論を通して参加した全員が多くの学びを得たと思います。自治という考えや自治会および医学連の存在意義に意識を向ける良い機会となったことでしょう。大会で得たことを活かして、全国の学生自治会をさらに発展させられるよう活動していきましょう。